<ヨーダの言葉>

    今回は<仮説と検証>の補足をお話します。目の前に起こった事柄を観察して、因果関係を考え、それを仮説として検証するのが科学者の役めだというお話をしました。これは、目の前に起こった事柄から仮説を思いつき、検証もせずに感覚的に自分が正しいと主張しても真実に結びつくことは極めて稀だということが解っているし、それは論理的に客観的な証拠とはなり得ないからです。エビデンスの十分でない仮説をお互いに主張しても、論理的に決着をつけることはできません。その状態でお互いに張り合っても言い争いになるだけですし、声の大きい人や、立場が上の方が勝つに決まっています。ただ、社会に於いて、この様に自分の思いついた仮説が正しい、『何故なら疑いなくエビデンスがあるからだ(先の例ではミーちゃんがゴロニャンした事実)』と言い張る人は非常に多く、厄介ではあります。相手の主張が論理的に破綻している場合なら、論理が飛躍しているとハッキリと説明できるのですが、この場合は、ミーちゃんが“ゴロニャンするのは、餌が欲しいからだ”と論理的には間違いもなく、そう言えば近所の猫もゴロニャンして餌を貰ってた、と感覚的に正しいと思い込んでしまう人も結構いますから。今ここで引用したエビデンスと科学でいうエビデンスはちょっと違います。そこで、科学で言うエビデンスとは何か?ということになるのですが、その説明は因果性やエビデンスレベルについて順次お話をさせてください。長くなりそうなので。今日はここでちょっと気晴らしをして終わりにさせていただきます。


    スターウォーズに出てくる“フォース”を知っているでしょうか?ジェダイの力の源泉とされている力です。私が子供の頃の和訳では”理力“と訳されていました。そのフォースとジェダイについてジェダイマスターであるヨーダはこんな言葉で表していますので(英語部分)、私が日本語を補って私の解釈が伝わり易いようにしてみました。

Many of the truth that we cling to depend on our point of view.
現実に起こった出来事でも、人によって見方、仮説は異なります。
私の言う科学者のモノの見方とは、事実から真理や自然の法則を見抜く方法であり、技術です。

To be Jedi is to face the truth, and choose.
ジェダイであることは、事実を直視し、様々な思い込み、仮説から自然の摂理を見極めることです。
A Jedi uses the Force for knowledge and defence, never for attack.
ジェダイはこの理力を知識や平和の為に用いますが、他者を攻撃する為に使ってはなりません。と言うか、攻撃の為に用いた途端に自我が生じるから他者を攻撃できないのです。この自我が生じるということは思い込みに囚われることであり、ジェダイの理力の源を失わせることに繋がり、真実を見極められないからです。武道で言う“後の先”の極意です。相手からの攻撃に対しては、無想無念で対処しますが、自分からは攻撃を仕掛けないということです。

A Jedi's strength flows from the Force.
ジェダイの強さは、様々な仮説の中から自然の摂理を選び取る理力に在るのです。

To answer power with power, the Jedi way this is not. 
力で相手を屈服させる方法は、ジェダイの自然の摂理に従ったやり方とは相容れません。ジェダイとは無私でなければなりません。

Fear is the path to the dark side. Fear leads to anger, anger leads to hate, hate leads to suffering.
自分の考えたことを否定し、自然の摂理に任せることは自己の否定という恐れに繋がります。自分が考え、正しいと思った意見を否定されて悔しい、腹立たしく思ったことはないでしょうか?自分の考えが常に正しく無いことを自覚し、客観的になることはとても勇気のいることなのです。ただ、そのことを恐れて、自分が正しいという思い込みにしがみつくことは暗黒面に囚われること、即ち真実や自然の摂理から遠ざかることです。自分が正しいと考えていたことが実現しないと、臆病な人はその原因を外的要因に求め、怒りに繋がるでしょう。時には、原因を社会や他者に向け、怒りをぶつけるかもしれません。その怒りや憎しみは、元を辿れば自分で自我にしがみついた結果がもたらしたものなのです。

In the end, cowards are those who follow the dark side. 
繰り返しになりますが、つまるところ、暗黒面に堕ちるのは自分が正しいという根拠のない妄想を捨てきれなかった臆病な人間なのです。

The dark side clouds everything. Impossible to see the future is.
暗黒面というのは、全てを覆い尽くし、真実から遠ざけます。思い込みを捨て、自然の摂理に従えば、物体が高いところから低いところに落ちるように将来を見通すことができます。これが科学的なモノの見方が言霊の様なものだと言った理由です。今で言うと情報リテラシーと言うべき能力もこれに該当します。

『正義は論議の種になる。力は非常にはっきりしていて、論議無用である。そのために、人は正義に力を与えることができなかった。なぜなら、力が正義に反対して、それは正しくなく、正しいのは自分だ と言ったからである。このようにして人は、正しいものを強くできなかったので、強いものを正しいとしたのである。』(『パンセ』パスカル